素敵な出会い
昨日負けたことで、こういう時は必ず1レースに勝負レースが来るのです)勝負だった。
少なくとも、これが的中したら帰りだということは、伝えたかった。
仮に2万円持っていたら、1万円以上ですね。
1万円賭けたとして、配当は3万3000円になる。
もしも昨日3万円負けていたら、これでは2日間の合計はまだマイナスですよね。
でもこれがミキリの重要なポイントなのです。
昨日の負け分は、今日のノルマには含んではいけない。
昨日負けたから一気に取り戻そうとか、一獲千金を夢見ると、持ち金を全部賭ける。
そうなると、明日の活力もなくなり、最終的にはネタもなくなる(もちろん、これは取材競馬だったからのこと。
もし局長があの場にいて、何のハンデもない勝負の場面だったら、恐らく一気に勝負に出ていたでせう)。
ミキリは博打の常道ですが、今ひとつ、馬読みでミキリをしなければいけない理由は、完全に読み切って勝負したレースで的中した場合、完全燃焼してしまうからです。
そうなると、あとは当たりません。
出涸らしというか、的中に酔うというか。
もちろん、そうでないケースもある、それで7本連続的中させた過去もあります。
それが、またそのときの状況なのです。
何度も言うように、私の競馬のやり方は一般的ではないし、面白みもありません。
本物の人とか、本物の勝負は、みんなこういうものです。
でなかったら、答えのないギャンブルで生きて行くことはできません。
競馬なんてアソピでやるものじゃありません(といって、儲けようと思うものでもない)。
私だって、趣味としてなら、絶対にやりません。
中央競馬界に吸い上げられるだけです。
誰もテラ銭のことなど考えていませんからネ。
博打場では、5%のテラ銭でも、全員が死ぬのです。
Tは馬読みを始めて 年のキャリアだと言う。
その間、多くの人々が彼に関わってきた。
後で紹介する競馬社長、彼の『馬読み日記』に度々登場するアキパさん、そしてS昭編集局長等々。
様々な人間が、ギヤンブラー・Tに魅了されてきた。
実際にTに会ったことのない人には、「競馬はギャンブルである」と言い切るTに関わる人を、ただ、お金を儲けるために、彼に、彼の馬読みに関わってきたのだろうと思うかもしれないが、それは違う。
なんというか、一言でいうと「生きた勝負師」の魅力である。
なかなか難しいが、とにかく、Tと一緒にいると「勝負の醍醐味」を存分に味わえるのだ。
そんな様々な人々を差し置いて、幸運なことにぼくは彼の「全財産勝負」宣言に2回も立ち会うことが由来た。
1回目は、前項目で書いた競馬王編集部の「試験」の日であり、2回目が、これから紹介する「麻雀弟子との勝負」のときだ。
さらに幸運なことに、T自身が、この勝負のことを「我が馬読み最大最高の全財産勝負宣言」だと言う。
この瞬間に出会った興奮は、本来は言葉で言い表すことの出来ない感動である。
Tは常々「私の馬読みは、本にはならない。
テクニックは馬を見ること、これだけ」と言うのだが、その瞬間は、まさに言葉通りだった。
どう考えても具体的に1着2着に来た馬のどこを見て、何を感じて「全財産勝負」宣言を出したのか、理解できないのである。
忘れもしない、平成8年12月 日のことだった。
有馬記念の一週前の中山競馬場。
この日は、Tとぼく、それと一人のゲストが来ていた。
Tが日記を連載している雑誌『月刊プロ麻雀』を見て(局長も、この雑誌の連載を見てTに接触した)その生き様に心酔し弟子入り志願をしてきた若手の麻雀プロ・Yである。
このYという男も、また生粋のギヤンブラーなのである。
弱冠 歳にして、ギャンブルだけで食っている。
彼は麻雀と将棋こそ、ギャンブルの王道であるといった生き方をしている。
競馬は門外漢、この日は人生数回目の競馬場だったと言っていた。
この後も何度か一緒に競馬場に行く機会があったが、彼の馬券の買い方を見ていると、確かにギャンブラーなのだ。
金額の問題ではない。
駒の上げ下げの感覚が絶妙なのだ。
Yには、ギャンブラーの素質が十分にあります。
だからと言って弟子にすることは出来ない。
将来がある。
そんな若者を博打の世界に引き吊り込むことは。
まして、本人は麻雀プロを目指してる。
麻雀と競馬は両立しませんからネ(私でさえ・・。
まして若者なら、なおさらのこと)。
「若き属博者は、老いての乞食」という冒葉がある。
前にも書いたように、私は初めっから乞食-老いてから乞食になったわけでもない。
また、一獲千金を夢見てギャンブラーになったわけでもない。
今も馬読みをやっているときは一獲千金は考えない主義です。
が、Yの場合はその可能性がある。
あのまま博打打ちで行ったら。
だから、そうならないためにも私のコーチが必要。
がこれから先のある若者に・・というジレンマがあるのです。
なぜ3人で競馬に行くことになったか。
話は簡単だ。
麻雀界でも伝説となっている雀士・Tに魅了されて弟子入りを志願したYが、その師匠と仰ぐ雀士の、馬読みの勝負場面を見たい、と申し出たわけだ。
ところが、この男もまたギャンプラーとしては長所なのだが、太々しいのである。
弟子入り志願したとは言っても、そこは職人の弟子入りとはわけが遣う。
すでにギャンブルで食っている男なのだ。
あくまでも紙の上に書かれた日記に魅了されて弟子入り志願したのであって、Tのナマの勝負場面の凄さを知らない。
麻雀界では、ほとんど抹殺されていると言ってもいい伝説の雀士なのだから、それも致し方ないと思う。
しかもこの前日、初めての競馬を見せてもらった日が、収支面ではトントンに終わっていた。
太々しいギヤンプラーYは、ちょっとTをナメ始めていた。
この目、Yは朝から電話にへばりついていた。
何をしているのかと聞くと「Q2を聞いている」と言うのだ。
なんでも、知り合いのプロ雀師が、趣味で競馬予想のダイヤルQ2を開設してその予想を聞きたいらしいのだ。
それを知ったのは1レースをハズした後のことだった。
ぼくはTと付き合いだして、すでに4カ月が経過しているから、この行為がいかにTの神経を逆撫でする行為であるか、身震いするほどよくわかる。
すでに録音済みのペーパー派の予想である。
しかも同じプロ雀士がやっている。
勝負を見せてくれと言われて中山競馬場までやってきて、この態度。
Yはニヤニヤしていた。
ちょっと挑戦的だったぞ!とTを見ると、無言で馬を見ていた。
が、怒りで湯気が立ち上っているようにさえ見えた。
これがパドックでなかったら、いや、一緒にぼくがいなかったら(Tのこの日のお客は、Yとぼくの2人。
つまり、一方に腹を立てたからと言って、仕事を放棄するわけにはいかない)恐らくここでプッツンして終わりだったはずだ。
この日の勝負は、2レースから一気に緊張状態に包まれた。
Tとしては、弟子に師匠としての本物の勝負師の姿を見せたい。
いや、絶対に見せつけなくてはいけない場面だ。
しかし、2レースもハズした。
続けて3レースもハズした。
「午前中で決めるから」Yが前日「明日も競馬に行く」と言い出したとき、それを信じている2人としては3レースの時点で、すでにネタの半分を溶かしている。
しかも、ここまでかすりもしていないのだ。
不安になるのは当然だろう。
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